【基本情報】
株式会社ベーシック(本社:東京都新宿区、代表取締役:奥田 克彦、以下「ベーシック社」)と順天堂大学(所在地:東京都文京区、学長:代田 浩之)医学部脳神経外科学講座の寺本紳一郎准教授は、ICT技術を利用した遠隔コミュニケーションシステムを基盤に、高度遠隔手術教育システム(以下、本システム)の社会実装に向けた共同研究を開始した。
このインタビューでは、主に順天堂大学と、ベーシック社による、DxDoor技術を用いた遠隔手術教育システムの開発に関する共同プロジェクトについて取材した。
(取材、記:順天堂 GAUDI・エンタープライズ機構
事業化推進戦略室 室長 奈良 環)
◆奈良「寺本先生がこの研究を行いたいと着想した背景を教えてください。」
寺本准教授の課題認識として、近年、地域医療において、医療資源の偏在・医療従事者の働き方改革・人口動態の変化などが複雑に絡み合い、医療サービスの観点で地域格差を生み出していることであり、主な原因は外科医不足と認識されている。外科医が減れば、外科医は、自分のサブスペシャリティを超えた技術や知識を必要とするが、それらを学ぶ場も減ることになる。
この問題は数十年後の社会ではますます顕著になっているはずと、寺本准教授は語る。
寺本准教授によると、現在、脳神経外科手術は、外視鏡や内視鏡を用い、モニターをみて行うモニターサージェリーが主流となっており、この流れにより、従来術者と第一助手が没入していた手術に、手術参加者全員がモニター情報を共有することができ、手術教育にも有効であることがわかっている。特に実技の習得を伴う外科医にとって、都市部以外または指導医が身近に存在しない地域では、一般的に、都市部に比べて「学びの場」は限られ、外科習熟医の育成は外科領域全体の課題となっています。そこで、寺本准教授は、現在主流になりつつあるモニターサージェリーにおける術中モニター情報を更に展開し、遠隔通信技術を用いて遠隔地にいる外科医と共有し、遠隔地の外科医もオペ室にいるかの如くリアルタイムにエキスパートの手術を学べる遠隔手術教育システムがあれば外科医育成に繋がり、地域医療格差に貢献できるという構想に至った。
このモチベーションが、非常に短期間で、構想から製品としてリリースできる直前まで現在、至ることができた要因の一つと、取材から想像することができた。
◆奈良「高度遠隔手術教育システムの特長と提供価値を教えてください」
- 本システムのコンテンツ制作および監修は、180年余の歴史を持ち、伝統的に熟練、卓越した技術を持ち在籍する順天堂の外科医エキスパートが担当すること
- ベーシック社が保有する技術を適用し、外科手術における大画面での高解像度の画像による手術・手技のリアルタイムモニター情報を、通信環境への依存を最小限に抑え円滑な伝送によるリモート環境での共有と双方向コミュニケーションを実現したこと
- 同システムは、多拠点の遠隔地を一般的なインターネットで同時に結ぶことを可能にしたことにより、本システムを通して教育を受ける人材数や幅が格段に増えること
- 行政から発出されているガイドラインに則り、技術的なセキュリティ面での保護がされていることにより、術中情報へのリアルタイムでアクセスが可能になったこと
- 既存システムより低コストで高度なデジタルツールの搭載がなされていること
ローコストで利用しやすく、教育システムとしてハイクオリティであることに価値があると寺本准教授は総括する。

◆「株式会社ベーシックさまより、順天堂との今後の関係への期待、製品の紹介をお願いします」
DxDoorは、医療現場でのコミュニケーションを支援するクラウドサービス。術場の状況や医用画像をリアルタイムで共有し、音声や描画機能を活用したコミュニケーションが可能となっている。セキュリティ対策は当然として、簡単な準備で利用開始できることが特徴です。
順天堂大学医学部 寺本准教授と連携して、まずは脳神経外科領域における高度遠隔手術教育システムを共同開発し、将来的に外科領域全般への活用を目指す。

◆奈良「今後の実用化・商用化に向けた展望をアカデミア・医療施設の立場とシステムを供給する企業の立場からそれぞれ教えてください」
寺本准教授からは以下のような要件の認識が示された。
- 順天堂大学において多施設共同研究により、実際の術中モニター情報を使用し、順天堂医院と順天堂各附属病院間でDxDoorによる遠隔通信の実証実験を行い、社会に提供する製品としてエビデンスによる信頼性を高めることをアカデミアとして行っている。実証検証により本システムを完成に近づける。
- 社会への供給にサステナビリティ―を持たせるためには、企業が一定の収益化をえる構造にしなければならないが、医師・研究者として多くの医療機器メーカーにアクセスし、ユーザーとしての課題を収集し、ベーシック社にフィードバックしている。
- 医療機器メーカーをスポンサーとした研究グループの創設による継続性のある研究を通した品質改善やユーザーへの提供価値の向上
- モニターサージェリーは他部門の外科でも主軸として行われているため、脳神経外科に続き他部門の外科領域へもDxDoorによる遠隔手術教育を展開したい。
- DxDoorは世界中の外科医と繋がることが可能な遠隔システムのため、世界の名医の手術に参加できる世界的な手術教育プラットフォームや、医学生や研修医に向けた早期外科医育成戦略としても活用を視野に入れたい。
- GAUDIの施設や人的なサポートを含めた大学のバックアップによる社会の信頼性の向上も並行して行っていきたい。
ベーシック社 小林氏からは以下のような認識が示された。
- まずは医師・臨床現場の声に傾聴し、問題点やニーズを把握したい。自社の技術でクオリティーを以て市場に応えること
- 事業を維持するだけの売上と販路の安定を確保したうえで、社会課題の解決に取り組むこと
- 順天堂大学としっかりとパートナーシップを維持していくこと

◆奈良「motomachi GAUDIの施設であるグローバルシミュレーションルームを、医療機器メーカーへのプレゼンテーションを通したヒアリングや情報収集の場として活用いただきましたが、効果や使用感など、教えてください」
寺本准教授、小林氏:GAUDIの施設を使ったことで特別感があり、企業の方々も招かれているという感覚を持ってもらえた。都心でこのような施設を使えることは貴重で、プレゼンテーションを行うのに適した環境だった。
奈良:こちらの想定にあった使用の仕方と効果であり、安心した。また光栄である。一方で活用の仕方は固定しているものではないので、研究者と企業の共同研究等の成果に向けた取組みの様々な場面で積極的に活用してほしい。
